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INTERVIEW: La Toile 後半

Designer, Hanna Yoo

Text&Edit: Eriko Azuma

2013年にニットとジュエリーのスモールコレクションからスタートしたSAYAKA DAVISは、ブランド設立10周年を迎えました。これ記念して東京とNYで、デザイナーHanna Yooとのコラボレーション展示が開催されました。

ソウル、パリ、NYのファッション界での活躍を経て2021年に自身のプロジェクト「hannayoo works」をスタートした韓国出身のデザイナーHanna Yoo。モダンで繊細、ハンドクラフトによるアートピースのようなジュエリーはどのように生まれたのか。インタビューから、そのクリエーションの原点を紐解きます。

ソウル、パリ、NY。拠点を移しながら次なるステップへ

2021年、ブルックリンを拠点に「hannayoo works」を設立したHanna Yoo。韓国のキョンプク大学でファッションを学んだ後に渡仏、l'Ecole de la Chambre Syndicale de la Couture parisienneを卒業し、フランスのブランド「BARBARA BUI」で5年間、デザイナーBarbaraの右腕として活躍。その後NYに拠点を移し、2013年から2022年の8年間、「Tibi」のデザインディレクターとしてコレクション全体のディレクションを務めた。

「ソウル、パリ、NYと拠点を変えながら、ファッション業界で約20年以上働いてきました。様々なことを経験し仕事も充実していましたが、次のステップに進む時は必ず来ると思っていましたし、自身の創作活動への渇望を感じていたんです。

2020年春、コロナにより世界が変わり始めました。それと同時に、この危機は、自分自身や命の大切さ、自分のやりたいことを考えるチャンスへと変わりました。自宅で仕事をしなければならなかった私は、頭に浮かんだアイデアをもとに、手に入る材料は何でも使い、手仕事で制作を始めました。

以前から陶芸に興味があり、コロナ前は毎週仕事が終わってから陶芸を習っていました。自宅で仕事をしながら窯を使わずに陶芸を続けられる方法はないかと考えた結果生まれたのが、「イヤーオブジェクト」。子供たちが遊ぶ、軽量粘土で作った耳のオブジェです。

当初はTibiとのコラボレーションという形で発表していましたが、その経験がhannayoo worksの誕生に繋がりました。自分の作品と人が直接つながることに、とてもワクワクしました」

他にはない質感、色彩、シェイプを持つHannayooのジュエリーは、軽量のエアクレイを樹脂コーティングしたもの。韓国で生まれ、牧師の家庭に育った彼女のインスピレーションの源は、幼少期に父親が設計した教会。赤レンガ、コンクリート、金属、石。それらの素材が身近な環境で育ったことが、独自の感性の核となっている。

「洋服からジュエリーへ、作るものは変化しましたが、自分の中で変わったという意識はあまりないんです。自分をジュエリーデザイナーとしてカテゴライズしておらず、自分は自分。洋服は布をドレーピングしたりデザインをスケッチすることから始まり、多くの人が関わってできあがりますが、今私が作っているエアクレイのジュエリーは、自分の手の中ですぐに形ができあがる。自分のインスピレーションがダイレクトに形になる、その面白さを感じています」

時に大胆に、時に繊細に、自由に形作られるhannayoo worksのジュエリー。創作をする上で大切にしていることは?

「洋服でもジュエリーでも、様々な面で捉えることを意識しています。人間の体も前、後ろ、横、上、下、見る角度で全然違いますよね。常にどの角度から見ても美しいように、デザインやスケッチをする時も全ての角度を見るようにしています。そしてフレキシブルでいること。変化を恐れず新しいことにもポジティブに、水のように自由に形を変えていきたいと思っています」

ジュエリーを通して、様々な人生のストーリーをシェアする喜び

作品は全てオーダーメイドで、お客様とのディスカッションを通して受けたインスピレーションを形にした一点もの。壊れたりビジューパーツが取れたりしたら、また異なるパーツを加えてリペアするため、唯一無二のオリジナルジュエリーとして、持ち手とともにストーリーを刻んでいく。

「ブランドを立ち上げたばかりで、まだ小規模ではありますが、自分の手の届く範囲で仕事ができる、今の状況に感謝しています。ジュエリーはすべて一点もののオーダーメイド。お客様のリクエストや、それにまつわるストーリーを聞くことで、様々な方の人生に触れることができます。結婚や大切な方の誕生日のギフト、自分へのプレゼントなど、お客様の人生の特別な瞬間をシェアしながらものづくりをしている実感があり、すごく幸せです。

先日NYでポップアップショップを開催した際には、多くのお客様と直接出会うことができました。コロナ禍を経て、コミュニケーションで生まれるもの、人と直接関わることを大切にしたいという思いを、より強く感じるようになりました。流れるように自然に、自分の手でできることをする。そしてこれからも、人生の旅路を通じて、そうあり続けてたいと思っています」